家づくりブログ

22/04/15

宇都宮紀行

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    現在営業中のお客様で、温熱環境や設備機器に大変関心の高い方がおられ、換気設備等も含め計画を依頼された設計事務所が栃木県宇都宮市にあります。今回はその設計士さんに施工中の現場を見せていただけることになり、押っ取り刀で高速を飛ばして宇都宮市まで社長、w辺棟梁、監督s水と一緒にお邪魔しました。

    宇都宮市のイメージとしては『餃子の町』。駅前について駐車場で車を降りるとすでに漂う餃子の香り。ちょうど駅中の餃子店の裏に駐車していたようです。

     

     

    社長に押えてもらっていたビジネスホテルにチェックイン。何やらラグジュアリーな雰囲気漂う内装です。廊下の一角にギャラリーがあったり、各階に珈琲ラウンジがあったりと、普段携わっている住宅設計、工事とはまた違った動線計画や収まり、材質感を見る事ができます。すぐにその辺に目が行ってしまうあたりもはや職業病ですな。

    夕方に到着し、その晩は設計士さんと『予習』と称した食事会。電話やZOOMではお話ししていましたが、こうして遠方の同業の方と実際に会って打ち合わせたりというのは普段できない貴重な体験です。

    設計士さんに案内していただきました、宇都宮駅東の『ペニーレイン』というレストラン。お話によれば、『関東地方では結構有名なお店なんですよ。』との事。ビートルズをモチーフにした内外装でファンにとっては垂涎の造りです。エントランス外部にもアビィロードを模したオブジェがあり、店内もビートルズ一色。予習お打合せを忘れて満喫してしまうところでした。

     

    翌朝、早速施工中の現場を拝見にあがりました。ミノワも加入する『新住協』、そのご縁で知り合った宇都宮市の『r設計』主宰のk長先生(左写真右から2人目)です。現在ミノワで検討中のお客様は愛知県の三河地方の方ですが、新住協を通じて全国の設計士さんの中からk長先生を探し当てられたとの事。まさしくその情熱たるや・・。

    そしてこの現場を担当する大工棟梁の、こちらもw辺さん(右写真中央)。社長、s水はk長先生と設備の話で、w辺棟梁同士は材料や収め方の話で非常に盛り上がっております。

     

     

     

    特筆すべきは既製の熱交換器、換気扇、エアコンを組み合わせたオリジナルな冷暖房の循環システムの概念と、それを実現させるための徹底的な現場の監理。k長先生のお話の端々から机上の空論ではない確かなシミュレーションの裏付けと現場経験による理論をうかがう事ができます。一言でいえば『なるほど、そりゃあエアコン一台で効くわけだわー。』と無意識に方言が飛び出す筆者。

     

    床下に潜らせてもらいました。r設計さんの計画はGL~1FLまでがおよそ90㎝。一般的な工務店では50~60㎝くらいのところが多いのですが、これだけ高さを上げるメリットとして、床下点検がしやすい事、床下に設備を格納するので配管が容易な事、人通口を設けないので布基礎(基礎梁)を分断する必要が無く耐力に優れる事、同じく配管が布基礎を貫通しないので耐力に優れる事、施主様が収納としても使える事、が挙げられます。

     

    床下にはk長先生の理論の肝となる熱交換器、換気扇、ダクト、エアコンなどの設備が満載。既製品には無く必要な部材は合板と断熱材を組み合わせて造られています。これだけのボリュームの仕事をするにはやっぱり床下有効高さはこれくらいあるとありがたいです。

     

    玄関ベンチの下に格納されていたエアコンと床下から格納庫を見たところ。普通の壁掛けエアコンが居室でもない玄関のしかも箱の中に格納されている。この状況で約40坪からの住宅の全体がほとんど温度差なく快適に暮らせると聞くと、理論を知らない立場の人からして『そんな眉唾な』という気持ちになるのも分からないでもありません。

     

    外周を見学していると作業中の設備業者さんが『この中に水道屋さんはおるかね?』と。このような計画では給排水管の壁抜き位置は比較的厳密に決められてくるので、狭小地など先行して敷地配管をする際には地中の桝の位置と被らないように注意しなさいと教えていただきました。

     

    急遽、隣町にある現場をもう二つ見せていただける事になり、その一軒目を訪ねました。すでに昨年お引渡しをされているところですので、こちらは外部のみ拝見しました。杉板の押縁工法でされた外壁仕上、その際に行う防水の注意点などうかがいました。押縁工法は筆者も非常にやってみたい仕上なのですが既製品の外壁材と違い、防水仕様やメンテナンスなど、採用するには非常に勇気のいる仕上です。

     

    この杉外壁は無塗装仕上ですが、お客様が経年変化を楽しみたい方らしく『早くお寺のような色になってほしい』との事だそうです。

     

     

    2軒目の現場にお邪魔しました。まずは外部周りから拝見しましたがこのk長先生、室内の温熱環境だけでなく外壁の防水に対する監理も徹底しておられ、特にサッシ周り、配管周りの防水の考え方には舌を巻きます。

     

    屋根は太陽光発電一体のエコテクノルーフ。施工にはメーカーの講習を受講する事が必要ですが、約1日で屋根工事と太陽光工事が終わるスグレモノです。

     

     

    屋内の様子を拝見。たまたまこの日は職人さんは不在でしたので施工のお話は聞けませんでしたが、k長先生によると、こちらでも大工さんによって収め方や施工順序は千差万別あり、その都度応じた方法で作業されているそうです。使用されている材料はこの東海地方とそれほど変わりませんが、この設計内容を満たすための施工法、w辺棟梁の脳内ではすでにイメージができてきているでしょうか。

    ユニットバス設置位置に立つストーンヘンジ。1階床高をここまで上げるという事はユニットバスも上げる事になります。逆にこれだけ高ければ点検が非常に楽です。

     

    k長先生、温熱環境のシミュレーションや現場管理だけでなく、許容応力度計算もバッチリとこなされます。昨今の構造用合板不足によって耐力ボードなどを併用され、この現場も四苦八苦されて計算をまとめられたとの事です。

    その時々の状況によって複数の要因を専門的な知識を駆使してまとめ上げる、設計業の本懐のようなお話をうかがう事ができました。

    2日に渡り現場を案内していただき、その理論、概念、実際の状況、さらには失敗例も惜しみなくお話ししてくださいましたk長先生、お忙しい中大変ありがとうございました。かねてより無暖房住宅を目指すミノワ(特に会長f井)は『教えてもらった理論を取り入れていこう』と鼻息荒く次の現場にのぞんでいます。筆者個人的にはk長先生の仕様にどこまで喰らいついてけるか・・?と戦々恐々としておりますが。