消えたカンアオイの謎
カンアオイという植物をご存じでしょうか。
少し明るい林の中や、斜面の薄暗い場所にひっそりと自生する、地面に張り付くように育つ多年草です。自宅のすぐそばにも、毎年変わらずそこにある、数株のカンアオイがあります。

その葉が、ほんの数日で跡形もなく消えました。
何が起きたのか、鋭い方なら分かったかもしれません。

犯人は、ギフチョウの幼虫です。
茎だけが残った株の根元をよく見ると、黒い体の幼虫が何匹もいました。昨年もこの時期に見かけています。今年はずいぶん数が多く、数株あった葉をあっという間に平らげてしまいました。
ギフチョウは「春の女神」と呼ばれる蝶で、春に成虫が姿を現し、すぐに消えてしまう蝶です。その姿はアゲハチョウに似ています。
その幼虫が食べるのは、カンアオイの葉だけです。他の植物では育ちません。
カンアオイを頼りに育った幼虫は、初夏に蛹になるとそのまま夏を越し、秋を越し、冬を越して、翌年の春にまた成虫として羽化する。そんなサイクルを繰り返しています。
葉を失ったカンアオイの根元で、まだ動いている幼虫を見て、この先どうするのだろうと少し心配になりました。カンアオイは根が生きています。数ヶ月のうちにまた葉を広げます。しかしギフチョウの幼虫はそれを待てないでしょう。
ギフチョウは、環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。カンアオイという、特定の植物を頼りにしているギフチョウは、カンアオイが減れば、ギフチョウも減ってしまいます。この場所でこれからも毎年、幼虫たちに葉を食べ尽くされながら、カンアオイが再生し続けてほしいと思います。
さて、今晩から明日にかけて、台風6号が岐阜県にも接近する見込みです。大雨と強風、土砂災害への警戒が呼びかけられています。
小さな命の心配をしている場合ではありません。屋外の物は室内に取り込み、不要不急の外出はお控えください。皆様どうぞ安全にお過ごしください。
